眼科疾患・手術
網膜硝子体疾患
強膜内陥術について
概要
裂孔原性網膜剥離に対して施行される術式です。硝子体手術とは異なり、シリコンスポンジ(バックル)を白目に縫い付けることで、眼球を外側から圧迫し、冷凍凝固を行い、裂孔を閉鎖することにより、網膜剥離を治療します。
手術の流れ
手術は基本的に局所麻酔で行います。
1. 白目を覆う膜(結膜)を切開し、網膜裂孔の周辺に冷凍凝固を行います。
2. 結膜の下の強膜というところにバックルを縫いつけます。
3. 網膜下液が多い場合は強膜を切開し排液をします。
4. 傷を閉じて終了です。
適応疾患
裂孔原性網膜剥離に対して行います。主に若年者や再剥離例などに施行されることが多いです。
合併症
・駆逐性出血
眼内の血管が破綻し、大出血をきたす合併症です。全ての内眼手術で起こる可能性があります(0.1%以下)。再手術が必要になることがあり、視力予後は不良です。
・眼内炎
手術により病原菌が眼内に入り、感染を起こす合併症です。器具の滅菌や術前術後の抗生剤の投与など行いますが、全ての内眼手術で起こる可能性があります(0.1%以下)。薬物治療や再手術が必要になることがあります。
・眼圧上昇
術後に一時的に眼圧が上昇する可能性があります(10%程度)。多くは薬物治療や時間経過により改善しますが、程度の強い場合は再手術が必要になる可能性もあります。
・硝子体出血
術後、硝子体内に出血をきたす可能性があります。多くは時間経過により改善しますが、大量の出血であれば再手術が必要になる可能性があります。
・網膜剥離
術後、残存硝子体の牽引などにより、網膜裂孔が発生し、網膜剥離を起こすことがあります。再手術が必要になる可能性があります。
・前眼部虚血
バックルを締めすぎる事により、血流が行き渡りにくくなり、虚血に陥り、視力低下など様々な合併症が起きることがあります。再手術が必要になる可能性があります。
・斜視、眼球運動障害
バックルを白目に縫い付けるため、目が動かしづらくなったり(眼球運動障害)、斜視が認められることがあります。自然に改善することが多いですが、程度の強い場合には再手術や斜視手術が必要になることがあります。
・バックル露出
手術では、白目を覆う膜(結膜)の下にバックルを縫い付けますが、長期間経過すると、結膜を突き破ってバックルが露出してくることがあります。バックル除去が必要になることが多いです。
・術後の充血、異物感
手術により充血、異物感を生じることがあります。時間経過により改善しますが、異物感が残ることがあります。
視力予後
術前の状態により大幅に変わりますが、黄斑部(ものを見る重要な部分)が剥離していた症例では視力低下、歪視(ゆがんで見える)が後遺症として残ることがあります。詳しくは担当医にお尋ねください。
術後の体位
剥がれた網膜を接着させるために目の中に空気やガスを入れる場合があります。その場合は、うつ伏せや横向きの指示が出ることがありますので、その際は担当医の指示に従ってください。
術後通院
術後早期は数日から1週間に一度の診察が必要です。術後経過次第で徐々に通院間隔を延ばしますが、数ヶ月程度の通院が必要になることが多いです。遠方の患者様の場合、クリニック近隣のホテルと連携しておりますので、手術終了後に宿泊頂いて手術翌日にクリニックにて診察することも可能です。詳しくは担当医にお尋ねください。